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ONE PIECEと旭日旗

韓国・ソウルで行われる「ONE PIECE」展が、原作に旭日旗の描写があるということで、会場側が開催を拒否している。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014071000934
原作のファンの一人として、どうか木を見て森を見ずにならぬよう、会場側にはおぼえていただきたいと願う。

私たち日本のクリスチャンは、韓国のクリスチャンから多くの霊的祝福をいただいている。
同盟教団の中にも、韓国人の牧師先生がたくさんおられるが、すばらしい方々ばかりだ。
私が神学生時代に奉仕した教会も、韓国人牧師によって開拓、伝道されたところだった。
こんな牧師になりたいと思わずにはいられない、愛に満ちた交わりがそこにはあった。

だが、韓国そして中国の若い世代が、日本の過去の戦争犯罪と、現在の日本を混同していることには悲しみを覚える。
「日本のアニメは大好きだが、日本人は大嫌い」というようなゆがんだ主張が、かの国ではある程度の市民権を得ている。
「ある程度」と書いたように、全部ではなく、一部の人々である。
集団的自衛権が必要であり正当であると主張している日本人が、全部ではなく一部であるのと同じように。

「ONE PIECE」ファンの間では「空島篇」と並んで評価の低い「魚人島篇」ではあるが、こんな印象深い場面がある。(アニメ版)
人間を憎み、「凶薬」(ドラッグ?)によって力を得て人間を滅ぼそうとする魚人反乱軍のリーダーに魚人族の王子がこう聞く。
「人間たちがおまえたちにいったい何をしたというのか?」
すると彼は答える。「何も」。
そして次の瞬間、手にしていた銛で、王子のからだを貫いた。

彼は以前のリーダーに植え付けられた「敵意」に支配されていた。
幼い頃の描写では、人間を憎みながら、人間が作った遊園地に憧れて、海面から見上げる場面もあった。
うがち過ぎとの批判も免れないだろうが、このほうがよほど旭日旗よりもはるかに直接的な、作者のメッセージではないかと思う。
70年前の日本の戦争犯罪を、まるで今自分たちが受けている被害のように考え、そこに縛り付けられている一部の若者たちに対して。

中韓には、70年以上前に実際に経験した痛みを今なお忘れ、許すことのできない方々がおられる。
日本と日本人は、そのような、すでに高齢となられた方々に誠意をもって対応しなければならない。
「すでに中韓共に、条約によって賠償を放棄した」という日本側の言い分は、政治的には真であっても、
人間の感情としては、それを盾にして、このような方々の思いを踏みつけるべきではない。

だが、日本の文化に囲まれて育ってきたにもかかわらず、自分たちを被害者のように語る若い世代に対しては、こう問いかけたい。
「あなたがたの祖父でも父でもなく、あなたがた自身に対して、私たち日本人が何をしたというのか?」
ONE PIECEを良く読んでいる彼らなら、その問いにどう答えるべきかがわかるだろう。
過去を語り継ぐとは、憎しみを語り継ぐことではない。過去を引き継ぐとは、理由なき憎しみを引き継ぐことではない。
旭日旗に目を留める観察眼があるならば、この漫画に込められた、はるかに建設的なメッセージに気づくことを願ってやまない。
posted by 近 at 09:55 | Comment(0) | 牧会卓話
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