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大学激戦区・新潟

 「牧師プロフィール」にもあるが、私は2011年から、出身校である敬和学園の理事・評議員の働きを担っている。
敬和学園は高校と大学を経営しているが、高校は1968(昭43)年、大学は1991(平3)年に創立された。
全国のキリスト教主義の教育機関の例にもれず、経営は決して一筋縄ではいかない。
新潟県の場合、高校進学率は99.4%、また県内高校への進学率は94.9%(「平成26年度高等学校等入学状況調査」)。
つまり中学校卒業者の約22,000名のうち、ほとんどすべては県内の高校へ進学する。
だから敬和学園高校に関しては、教師の努力もあるだろうが、定員割れの問題は、それほど深刻ではない。
しかし大学となると、話は違う。
有名な「2018年問題」についてはまた別の機会に語るとして、今後10年間で地方の小大学は次々と淘汰されていくだろう。
新潟もまた例外でない。いやそれどころか、地方の中で真っ先にその中心となる可能性が高い。

 簡単に説明すれば、年間2万人の高校卒業者の内、四年制大学に進学する者はその約半分の9千人あまり。
そのうちの6割は、県外の大学へ進学する。残りの県内組は約3千人。
さらにその3千人のうち、3分の1にあたる約1千人が、3国立大学と3公立大学に進学する。
こうして県内組のうち、私大に入学する者たちの数、2千人。
その2千人からなる一つのパイを、じつに新潟に11校もある私立大学同士で「奪い合う」のである。 以下の表は、新潟県が発行している資料を簡単にまとめたものである。
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参考:平成25年度大学等進学状況調査 平成26年度大学等進学状況調査

「大学進学者数>>県内>>私立」の数字を見ればわかるとおり、パイに2000人が詰まっていたのは平成25年度の話である。
翌年度、つまり平成26年度は、パイの中身はさらに県外へとこぼれ落ち、県内私大への進学者は1800名あまりとなった。
しかしそれに対して、国立・公立は、県内も県外も、減少どころか、いずれもわずかであっても増えている。
その一方で、県外私立大学への進学も126名の減である。
もはや私立大学の窮状は新潟県に留まるものではない。全国共通の問題として迫っている。

 新潟県の私立大学の多くに共通した弱点は、全国規模でのブランド力を持っていないということである。
以下は『2015年版大学ランキング』(朝日新聞出版)の「地元出身者比率ランク100」のうち、県内私大を抜粋したものである。
2位 新潟国際情報大学 99.7%
10位 新潟青陵大学 97.7%
33位 新潟工科大学 90.9%
39位 敬和学園大学 88.8%
42位 新潟経営大学 87.3%
52位 長岡大学 85.0%
59位 新潟薬科大学 82.8%
この数字は、その大学の学生のうち、新潟県出身者がどれくらいかということを示している。
全国2位の新潟国際情報大学に至っては、学生のうち県外出身者は0.3%しかいないということになる。
同大学の経営状況は決して悪くはないが、全国ブランドのない地方の小大学は、現状、県内の1800人を互いに奪い合うしかない。
そして1800人は、来年度には1600人になっているかもしれない。
互いに潰し合うことを避けるためには、県外から学生を引き寄せる、魅力ある大学づくりを切磋琢磨していくしかないのだ。

 新潟の各大学も、生き残りをかけて、苦渋の選択を強いられている。
敬和学園大学は、入学定員を20人減らし、180人にした。
新潟産業大学も、昨年までの入学定員160人を、同様にして140人に減らしている。
長岡大学に至っては、二つあった学科のひとつを廃止して単科とし、定員160人をいきなり80人へと変更した。
だが、入学定員の削減は、いうまでもなく収入減に直結する。
大学消滅のロードマップは、第一が定員削減、第二が新規募集停止、そしてその行き着く先は経営破綻である。
その第一の封印を開いてしまった以上、第二の封印に手をかける前に、財政健全化を成し遂げなければならない。

 大学淘汰の波は、まず地方の小さな私立大学から始まり、やがて大都市圏へ、そして私立から国公立へと向かっていくことだろう。
 まるで「ナウシカ」に出てくる腐海のように、その波はすべての大学に押し寄せる。伝統校やブランド大学も決して無関係ではいられない。
「ナウシカ」では腐海の役割は穢れた土壌を浄化させることであったが、現代の大学群には一体何が起こるのか。
それはまだだれにも見えていないのだ。
posted by 近 at 06:00 | Comment(0) | 大学問題
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