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2015.9.13「赦されているからこそ赦せる」

 こんにちは。豊栄キリスト教会牧師の近 伸之です。
関東・東北豪雨で被害を受けられた方々の上に励ましがありますように祈ります。
週報はこちらです。

聖書箇所 『ルカの福音書』6章27-38節
27 しかし、いま聞いているあなたがたに、わたしはこう言います。あなたの敵を愛しなさい。あなたを憎む者に善を行いなさい。
28 あなたをのろう者を祝福しなさい。あなたを侮辱する者のために祈りなさい。
29 あなたの片方の頬を打つ者には、ほかの頬をも向けなさい。上着を奪い取る者には、下着も拒んではいけません。
30 すべて求める者には与えなさい。奪い取る者からは取り戻してはいけません。
31 自分にしてもらいたいと望むとおり、人にもそのようにしなさい。
32 自分を愛する者を愛したからといって、あなたがたに何の良いところがあるでしょう。罪人たちでさえ、自分を愛する者を愛しています。
33 自分に良いことをしてくれる者に良いことをしたからといって、あなたがたに何の良いところがあるでしょう。
罪人たちでさえ、同じことをしています。
34 返してもらうつもりで人に貸してやったからといって、あなたがたに何の良いところがあるでしょう。
貸した分を取り返すつもりなら、罪人たちでさえ、罪人たちに貸しています。
35 ただ、自分の敵を愛しなさい。彼らによくしてやり、返してもらうことを考えずに貸しなさい。
そうすれば、あなたがたの受ける報いはすばらしく、あなたがたは、いと高き方の子どもになれます。
なぜなら、いと高き方は、恩知らずの悪人にも、あわれみ深いからです。
36 あなたがたの天の父があわれみ深いように、あなたがたも、あわれみ深くしなさい。
37 さばいてはいけません。そうすれば、自分もさばかれません。
人を罪に定めてはいけません。そうすれば、自分も罪に定められません。
赦しなさい。そうすれば、自分も赦されます。
38 与えなさい。そうすれば、自分も与えられます。
人々は量りをよくして、押しつけ、揺すり入れ、あふれるまでにして、ふところに入れてくれるでしょう。
あなたがたは、人を量る量りで、自分も量り返してもらうからです。」

1.
 イエス様の言葉は、いつも私たちの常識に挑戦してきます。敵を愛しなさい。敵を赦しなさい。敵のために祈りなさい。
そして、何よりも恐ろしい言葉が最後のほうにあります。「赦しなさい。そうすれば、自分も赦されます」。
これはマタイの福音書では、「敵を赦さなければ、父なる神もあなたがたをお赦しにはなりません」とあります。
しかし今日、イエス様の言葉を受け取るにあたり、まずみなさんの心に刻みつけてほしいことがあります。
それは、「敵を赦さなければいけないのだ」と、これらのことばを命令として受け止めないでほしい、
そしてこれらの命令に従うことができない私は、神さまに赦されないのではないかと考えてしまうことです。
イエス様のこれらの言葉は決して命令ではありません。むしろ、私たちが、イエス様の十字架によって、今与えられた姿を語っています。
敵を愛するということは、生まれつきの人間には決してできません。努力してもできません。
それはただ、イエス様が私のために死んでくださったと信じる者の中に生きている、神の力によってのみ可能です。

 35節の後半をご覧ください。「そうすれば、あなたがたの受ける報いはすばらしく、あなたがたは、いと高き方の子どもになれます」。
 クリスチャンとは、聖書によれば神の子どもになった人々です。なぜ、神の子どもになれたのでしょうか。
敵を愛したから神の子どもになれたのでしょうか。右頬をなぐってきた相手に左の頬を向けたから神の子どもになれたのでしょうか。
そうではありません。私たちは、イエス様が十字架で死なれたのは、自分のためだと信じたがゆえに、神の子どもとされたのです。
敵を愛したのは、私たちではなくイエス様です。上着を取りあう兵士たちに、いのちさえも差し出したのはイエス様です。
嘲ってきたパリサイ人のために、父なる神に赦しを祈られたのはイエス様です。
ただ、イエス様が私たちのためにすべてを成し遂げてくださったので、私たちは神の子どもとされました。
敵を愛せ、敵を赦せ、敵のために祈れ。そのあまりにも重い言葉は、イエス様の十字架を知らない人々にとっては、まさに不可能な命令です。
しかし私たちには、すでにその道を歩まれたイエス様がおられます。
イエス様を信じた者は、やがてこの地上を去るその日まで、一日一日イエス様の姿に似た者とされながら歩んでいます。
私たちは、赦さなければならないのではなく、いま赦しています。たとえ、赦せるはずがない、と思える現実の中にあっても、現に赦しています。
なぜならば、赦せない、赦さない、と私たちが歯をぎりぎりかみしめているその時に、イエス様が私たちの代わりに赦してくださっているからです。

2.
 ところで聖書の中には、「互いに赦し合いなさい」という言葉があります。
その言葉を聞いたある方が、「互いに」というのはおかしい、と言いました。
争いには加害者と被害者がいるものだ。被害者が加害者を赦すのはわかるが、加害者が被害者を赦すというのはあり得ない。
しかしここで「互いに」と言うのは、「赦し」の本質を表している言葉です。
夫婦関係でも、日韓問題でも、人はみんなこう考えます。自分も少し悪かったが、向こうのほうがもっと悪い、と。
向こうのほうから頭を下げてくるべきだ。そうしたら、こちらも少し考えてあげよう。
しかしそれは赦しではありません。赦しとは、相手のほうが悪い、自分が正しいという、権利を放棄することです。
相手が頭を下げてこない限りは赦しが生まれない、としたら、私たち人間の罪は、未来永劫赦されることはなかったでしょう。
使徒ヨハネは、イエス様の十字架を通して表された神の愛について、こう語っています。
「私たちが神を愛したのではなく、神が私たちを愛し、私たちのためにひとり子を十字架につけてくださいました。ここに愛があるのです」。
「愛した」、または「愛」という言葉は、そのまま「赦し」と言い換えることができます。
そして神という言葉を「私たち」、私たちという言葉を「敵」と言い換えても、意味はまったく同じです。
神が私たちを愛し、私たちのためにいのちを捨ててくださったからこそ、私たちは敵を愛し、敵のためにいのちを捨てることができるのです。

3.
 少し話は変わりますが、「毒親」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
子どもの心と人生に大きな傷を残してしまうような、親になりきれていない親のことを指すようです。
ある芸能人が、離婚や自殺未遂を繰り返しているのは、私の毒親に問題があると告白してから、しばしばマスコミで使われるようになりました。
現代の家庭は明らかな機能不全を起こしています。
だからといって、何でもかんでも「毒親」と呼んで親に責任転嫁する風潮は警戒しなければなりません。
実際のところ、毒親と呼ばれる人々は、アルコールや薬物中毒を抱える人が多く、子どもが親の年齢になるまでに亡くなる人も少なくありません。問題は、親がすでになくなっている場合、その子どもは、親に謝ってもらうことがないまま、苦しみ続けるということです。
その苦しみの中で自死を選ぶ人もいます。生きたまま、この負の連鎖を断ち切るには、ひとつの道しかありません。「赦すこと」です。
英語で赦しを「forgive」と言います。「give」、与えるという言葉が「赦し」に含まれていることは大きな意味があります。
赦すという行為は、相手の出方を待って、相手から受け取るものではなく、こちらから立ち上がり、相手に与えるものなのだ、ということです。
ついでに言えば、英語で忘れるを意味する「forget」の中には「get」、手に入れるという言葉が入っています。
忘れなければ、つまり自分の心を支配している敵意を捨て去るためには、別のものを手に入れることが必要です。
それが、あなたをどんな時にも愛し、犠牲となってくださるイエス・キリストの愛です。この愛によって、私を束縛するものは溶けていきます。
敵を赦すことは敵に与えることです。敵から受けた仕打ちを忘れることは神から受けた恵みを手に入れることです。

結.
 では、あなたの敵とはだれでしょうか。あなたを今、苦しめている人々です。
それはもしかしたら、今はもうここにはいない、だが今もあなたの記憶の中で、あなたを打ちたたき、嘲っているという、こともあるかもしれません。
しかし彼らのために祈ることが、彼らを救うことになります。彼らのなした悪を忘れることが、神の大きな報いを手に入れることになります。

 イエス様の命令はとてつもなく大きく、私たちはそれを行わなければならないと考えるときに、押しつぶされそうにさえなります。
しかしイエス様は、私たちに向けて語られることをすべてご自分で成し遂げてくださったお方です。
赦さなければあなたがたも赦されない。この重い言葉でさえ、クリスチャンにとっては明らかに恵みのことばです。
私たちはすでにキリストにあって、確かに赦されているがゆえに、必ず赦すことができる、いや、今すでに赦している、という保証なのです。
だから、イエス様の言葉は重すぎると顔を伏せるのではなく、むしろ暖かな約束として顔を上げて、立ち上がりましょう。
どうか、ひとり一人が赦された者として敵を赦し、祈られている者として敵のために祈ることができますように。
posted by 近 at 17:06 | Comment(0) | 2015年のメッセージ
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