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2015.11.1「目指したのは自由の国」

 こんにちは。豊栄キリスト教会牧師の近 伸之です。
またも期間限定のお知らせですが、11/5までGYAO!で「言の葉の庭」というアニメが無料で視聴できます。
「言の葉」と聞いて「みことば」を連想される方もいるかもしれませんが、聖書とは関係ありません。
ただ、「これがアニメ?」と思えるほどのクオリティ!雨のしずく、やかんの湯気一つ取ってみても、驚くほどの美しさ。
お話の内容は、いわゆるラブストーリーですが、告白した後からラストまでの10分間の展開は、良い意味で予想を裏切ります。
46分でこれだけのものが作れるならば、30分の説教も、もっともっとみことばの滋味を語ることができるはずだと改めて思わせられます。
週報はこちらです。

聖書箇所 『ルカの福音書』7章18-23節
 18 さて、ヨハネの弟子たちは、これらのことをすべてヨハネに報告した。
19 すると、ヨハネは、弟子の中からふたりを呼び寄せて、主のもとに送り、「おいでになるはずの方は、あなたですか。それとも、私たちはほかの方を待つべきでしょうか」と言わせた。
20 ふたりはみもとに来て言った。「バプテスマのヨハネから遣わされてまいりました。『おいでになるはずの方は、あなたですか。それとも私たちはなおほかの方を待つべきでしょうか』とヨハネが申しております。」
21 ちょうどそのころ、イエスは、多くの人々を病気と苦しみと悪霊からいやし、また多くの盲人を見えるようにされた。
22 そして、答えてこう言われた。「あなたがたは行って、自分たちの見たり聞いたりしたことをヨハネに報告しなさい。目の見えない者が見、足のなえた者が歩き、ツァラアトに冒された者がきよめられ、耳の聞こえない者が聞き、死人が生き返り、貧しい者たちに福音が宣べ伝えられている。
23 だれでもわたしにつまずかない者は幸いです。」

序.
 どんなクリスチャンであっても、初めて教会に来た日というのがあるはずです。
お母さんのお腹にいたときから教会に来ていたという人もおられますが、ほとんどの人は、教会に来てとまどった経験をお持ちではないでしょうか。私の場合、兄弟姉妹とお互いに呼び合っているのがまず不思議に思いました。
それから、月はじめの聖餐式。一度牧師が台所で食パンを切っている光景を見たことがありましたが、
なんで食パンとグレープジュースを飲むだけなのに、あんなに神妙な顔をするのか。
そして、「つまずき」という言葉もそうでした。私の通っていた教会の牧師が、「新々バイパスでパトカーを煽ったことがある」と昼食の時に話していて、娘さんから「みんなのつまずきになるからやめてよ」と言われていました。
私の辞書では、「つまずく」というのは石につまずくとか仕事でつまずくというのしかなくて、「みんなのつまずきになる」とは何を意味するのか、まったくわかりませんでした。
ところがその後、教会生活を歩む中で、「牧師につまずいた」とか「信徒のだれそれにつまずいた」といった言葉をいやになるほど聞くことになります。

 イエス様は、ヨハネの質問への答えとして、「だれでもわたしにつまずかない者は幸いです」と言われました。
それは、ヨハネがつまずきを感じていたか、つまずきそうになっていたということでしょう。
バプテスマのヨハネは、イエス様の何につまずきつつあったのか。
それを今日学ぶことを通して、私たち自身の信仰を改めて見つめたいと願っております。

1.
 さて、ヨハネは牢の中で、イエス様のなさったことについて、弟子たちから聞きました。
しかしそこで感謝を覚えるよりは、むしろイエス様へのつまずきがむくむくと起こってきたのです。
それは、イエス様が本当に救い主なのか、ということへの疑いでした。
「おいでになるはずの方」、つまりイスラエルが待ち望んだ救い主は、ほんとうにあなたなのですか。それとも別のお方を待つべきなのでしょうか、と。
なぜ彼は今、疑いを持ってしまったのでしょうか。その問いへの答えは、今日の19節と20節の中に隠されています。
19節、20節をもう一度読んでみます。
「すると、ヨハネは、弟子の中からふたりを呼び寄せて、主のもとに送り、「おいでになるはずの方は、あなたですか。
それとも、私たちはほかの方を待つべきでしょうか」と言わせた。ふたりはみもとに来て言った。「バプテスマのヨハネから遣わされてまいりました。
『おいでになるはずの方は、あなたですか。それとも私たちはなおほかの方を待つべきでしょうか』とヨハネが申しております。」

 回りくどい文章だとは思いませんか。20節がなくても、この文章は十分につながるのです。
しかしルカは、あえて20節を、すなわちヨハネの質問を弟子たちが繰り返し語っている姿を強調します。
これこそが、ヨハネのつまずきの原因をほのめかしています。
ヨハネの弟子たちは、忠実を絵に書いたような者たちです。無実で牢に投げ込まれたヨハネを決して見捨てません。
ヨハネが処刑された後には、危険を冒して彼の亡骸を引き取りに行きます。
そしてここでは、イエス様の前で、ヨハネの言葉を一言一句、まったく同じように繰り返します。
これが、ヨハネが築き上げてきた、弟子との絆でした。弟子は師のために命を捨てる、そして師の言葉を完全に忠実に繰り返す。
しかしその鉄壁の絆に対して、イエス様とその弟子たちの関係は、ヨハネの目にはどう映ったか。
あんなものは師弟関係ではない。イエスは、弟子たちを厳しく訓練するよりは、まるで野放し状態ではないか。
ヨハネの目には、イエスと弟子との共同生活は、つまずきとしか映らなかったのです。

2.
 イエス様は、宣教活動に入られてから十字架にかかられるまでの三年半、常に弟子たちと生活を共にされました。
しかし私たちが聖書から知ることができるのは、弟子たちの訓練された姿でもないし、日々成長していく姿でもありません。
どうしてここまで学習機能がないのかと思うほど、同じような失敗ばかり繰り返している弟子たちの姿です。
イエス様が「パリサイ人のパン種に気をつけなさい」と言うと、船の中にパンを忘れてきたのはだれだと口論するわ、
イエス様が十字架を見つめながら歩んでいる中で「だれが一番偉いのか」と競争するわ、
よみがえったイエス様が今天に昇ろうとしている間際まで、「今こそイスラエルを再興してくださるのですか」と、とんちんかんな質問をするわ、
成長の要素など何一つありません。
さすがのイエス様もあるときには「いつまであなたがたに我慢していなければならないのでしょう」と叫ばれたほどです。
そんな弟子たちの姿をヨハネが聞けば、そこにつまずきを感じるのも無理はなかったでしょう。
ヨハネにとって、来たるべき方、イエスのもたらす神の国は、ヨハネとその弟子の鉄の絆さえ越える、黄金の絆であるはずでした。
いや、そうでなければならないのだ、と。
だが、弟子たちの報告によれば、イエスはそのような弟子たちを厳しく訓練しようともしない。まるで楽しんでいるかのようにさえ見える。
 ヨハネの考えていた神の国は、自分の罪を激しく悔い改め、それまでの生き方を完全に変えていくものでした。
しかしイエスは、取税人や罪人、遊女と好んで交わり、しかも彼らに多くを求めない。
神の国は、幼子のような者たちに用意されている、とまで言う。
ヨハネにとって、イエスが作り出している弟子たちとの絆は、とても絆とは言えないようなものでした。そこに彼はつまずきを感じたのです。
しかし今、私たちは知っています。イエス様が求めていた神の国は、自由の国であるということを。
目の見えない者が見、足のなえた者が歩き、ツァラアトに冒された者がきよめられ、耳の聞こえない者が聞き、死人が生き返り、
貧しい者たちに福音が伝えられている、と。イエスの説く神の国には、弱い者たちが集まるところでした。
罪を悔い改めよという対決型ではなく、まず傷つけられた心に慰めを必要としている人の友となってくださいました。
取税人、罪人、遊女、そして幼子、ありとあらゆる人々を優しく受け止め、抱きしめていく自由の国でした。
ヨハネが自分にも他人にも厳しかったのに対し、イエス様はご自分が十字架を負う代わりに、人々には底なしの自由を与えてくださったのです。

結.
 私たちは、「つまずき」という言葉を利用して、自分と意見の違う人々を不信仰としてさばいてしまう弱さを持っています。
「つまずき」というフィルター、濾紙のようなもので自分と合わない人を排除していけば、そこには一体感のある教会が生まれるでしょう。
しかしそれは似た者同士という一体感であり、本当の一致とはまるでかけ離れたものです。
ヨハネの感じたつまずきは、自分の信仰とは異なる、他のクリスチャンの信仰を疑う、ということに比べられます。
しかしそのようなつまずきは、必ず乗り越えられるものです。
イエス様は、ヨハネのように厳しく、師の教えに忠実な弟子を育てるために三年半を過ごすこともできたでしょう。
 しかしそうされませんでした。
イエス様は弟子たちを友と呼び、どれだけ年が離れていようと兄弟姉妹と呼びました。
聖餐式を迎えるたびに、いつも自分の信仰を見つめ直すことのできる、自由な国を与えてくださいました。
教会は、みなが一斉に右向け右をするようなところではありません。それぞれが、人生経験も、信仰生活の上にも、違いがあります。
違いがあって当たり前で、違いがあるからこそ自由の国ということができます。
そこに、イエス様は三年半留まられたし、今もこの中に生きておられます。
与えられている違いを感謝して、歩んでいく者たちでありましょう。
posted by 近 at 08:23 | Comment(0) | 2015年のメッセージ
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