こんにちは、豊栄キリスト教会牧師の近 伸之です。
週報はこちらです。
聖書箇所 『詩篇』133、134篇
1.
「あなたにとって、日曜日にはどうしても欠かせないものは何ですか」と聞かれたら、当然ここにおられる方々は「礼拝」と答えるでしょう。
しかし巷では、サザエさんと答える方も多いようです。あるいは平成生まれの世代は「ちびまる子ちゃん」と答えるのでしょうか。
「サザエさん症候群」という、ストレス症候群があるそうです。
日曜日にサザエさんを見終わると、心の中にむなしい風が吹き、ああ、日曜日終わっちゃう、明日から学校かあ、会社かあ、いやだなあ。
そう考えずにはいられないというもの。ドキッとした方もいるのではないでしょうか。
月曜日のことを考えると憂鬱でたまらない現実の人々に比べると、サザエさんの登場人物は気楽でいいよなあ、と思いませんか。
しかしサザエさんを長年にわたって研究している、あるグループによれば、むしろ彼らの方がよほど大変だ、というのです。
この研究グループは、サザエさんの原作本に出てくるすべての会話を調べて、登場人物の年齢を割り出しました。
それによると、一家の大黒柱である波平さんは54歳、お母さんのフネは48歳だそうです。ところが長男のカツオは、まだ小学生。
60歳定年の頃に書かれたサザエさんにおいて、波平さんは子どもを大学に行かせるために、
定年になってもまだまだ仕事を探し続けなければならない、厳しい老後が待っているのだということです。
彼らの生活レベルの鍵を握っているのは、同居するフグ田家の存在。彼らがどれくらい援助してくれるかという、生々しい話が続きます。
それでも、家族がみな同じ家で生活している、サザエさん、あるいは、ちびまる子ちゃんの世界に、私たちは惹かれます。
家族全員が、同じテーブルに座り、同じ食事をつついている、何気ないけれども今となっては貴重な姿がそこには現れます。
来年、2020年は56年ぶりに東京でオリンピックが開かれます。前のオリンピックの時、東京にやってきた外国人記者たちは、
わずか20坪ばかりの、同じような形の家がずらっと並んでいる、長屋のような日本の住宅街を見て、ウサギ小屋と揶揄しました。
しかしどんなにささやかであっても、人々が自分の家を持とうとした理由、それは家族団らんこそが人生のしあわせだと信じていたからです。
それから半世紀、日本人のライフスタイルは変わりました。家族のすべての世代が、一緒に暮らし、一緒に食事をする家庭は少数派です。
しかしたとえ平成生まれの若い人でも、サザエさんやちびまる子ちゃんのような家族団らんの風景を知っている人がほとんどです。
だから家族がひとつに集まることは、いまの時代では困難なことはあっても、本来は普通のことなのだという感覚は、日本人に共通しています。
しかし、この詩篇の背景である、イスラエルにおいては、家族が共に集まるということは普通どころか、奇跡そのものだったのです。
2.
まず、前の方の詩篇133篇の1節をもう一度お読みします。
「見よ。兄弟たちが一つになって共に住むことは、何というしあわせ、何という楽しさであろう」。
ヘブル語の聖書では、言葉の順序が少し違っていて、直訳すると「見よ、何と善いこと、何と楽しいこと」という言葉が真っ先に来ます。
そして、その後に「善いこと、楽しいこと」の具体的説明として、「兄弟たちが一つになって共に住むことは」と続きます。
つまり、なんてしあわせなんだ、なんてたのしいんだ、という叫びが強調されているのですね。日本人からすると、ちょっとオーバーに感じます。
しかし、イスラエルの歴史は古代から現代に至るまで、兄弟が二つに分かれ、国が分裂し、民がばらばらに暮らす現実の連続だったからです。
イスラエル人の先祖であるヤコブは、相続権の争いがもとで、兄であるエサウとの対立と和解を繰り返しました。
そのヤコブの子どもたちは、兄たちが弟のヨセフを憎み、エジプトに奴隷として売り渡しました。彼らが和解するのは何十年も後のことです。
イスラエルが国としてまとまっていたのは、先にも後にも、ダビデ、ソロモンという二代の王が国を治めた、数十年間だけでした。
ソロモンの後は、北イスラエル王国と南ユダ王国というふたつの国に分裂し、約300年間、協力と対立を繰り返し、外国に国を滅ぼされました。
この詩篇は、その出来事の後に、外国から再びイスラエルに帰ってきた人々によって作られたものです。
なんとすばらしいことか。兄弟たちが一つになって共に住むことは。その言葉に隠された重みを、私たちはぜひおぼえたいものです。
いま、私たちはこの礼拝の中で、そしてこの教会というキリストのからだのなかで、おたがいがひとつにされています。
私たちが一体感を感じているからそうだということではありません。だとしたら、私たちもまた自分の気分次第で離れてしまうでしょう。
イエス・キリストが、十字架の犠牲、そしてよみがえりの事実を通して、私たちの救いが確かであることを約束してくださいました。
救われるとは、私たちがばらばらに生きるのではなく、イエス・キリストに繋がっている一本一本の枝として生きることです。
キリストに繋がっているならば、そこには喜びがあり、そこには自由があります。個性は一切殺されず、しかし一つにされたものとして歩みます。
この詩篇133篇は、兄弟たちという言葉を使っていますが、それは文字通りの親族や民族を表すというよりは、霊的な繋がりを表します。
ここにいる私たちは、今まで背負ってきたものも、いま抱えているものも、まったく違います。それでもなお、キリストにあってひとつとされています。
イスラエルは、日本と違って四季がなく、一年の半分はほとんど雨が降りません。しかし農作物は、たいへん豊かです。
それは、標高2800mほどのヘルモン山の頂、万年雪によって湿った空気が、他のより低い山々へとくだり、露がおりるのです。
イスラエルの農業は、近代の灌漑技術の進歩もありますが、古代より、この露の恵みによって支えられてきました。
3.
イスラエルの人々は、露のなかに永遠の命の祝福を見ました。
そして私たちは、この祝福が、いまや確かにキリストによって与えられていることを知っています。知っているだけではなくて、信じています。
イエス様は聖餐において、これはわたしの血である、多くの人のいのちの代価として流されるものである、とぶどう酒を飲み干されました。
それは苦しみを象徴する杯であるとともに、いのちを与える露でもあります。私たちも、このキリストを信じる信仰とともに、生きるのです。
今日の詩篇133篇と134篇は、一見、まったく別のものに見えるかもしれません。
しかし兄弟たちがひとつとされた、という恵みが与えられた者たちだからこそ、歌うことのできる詩篇がこの134篇です。
1節には、こうあります。「さあ、主をほめたたえよ。主のすべてのしもべたち、夜ごとに主の家で仕える者たちよ」。
これはだれへの呼びかけでしょうか。
巡礼者、つまり一般信徒への呼びかけではありません。祭司、レビ人といった神殿で仕える者たちに対しての呼びかけです。
しかも巡礼者たちが礼拝のなかで呼びかけるように礼拝の中で歌われたものだと言われています。
兄弟たち、すなわち、祭司もレビ人も民衆といった違いを超えて、エルサレム神殿に集められているすべての人たち、
彼らが一つにされて、そしてお互いに呼びかけている姿がここにあります。これはまさにキリストによって一つとされた私たちに繋がります。
私はみなさんを祝福します。そしてみなさんも私を祝福します。それがこの礼拝です。
神さまが、ここに集うすべての人を祝福の担い手としてくださいました。キリストを慕い、キリストを愛する者はみながそうされているのです。
この詩篇は、最後をこう結びます。「天地を造られた主がシオンからあなたを祝福されるように」。
「シオン」という言葉は、イスラエルまたはエルサレムを指す表現ですが、もともとの言葉の意味は、「荒れ地」「乾燥した地」だそうです。
私たちの心、生活、人生は、かつては荒れ地であり、乾燥した地でした。しかし今は、キリストにあって露に満たされています。
さあ、主をほめたたえよ。聖所に向かってあなたがたの手を上げ、主をほめたたえよ。
いにしえの聖徒たちが叫んだ祝福のことばを、私たちも叫びましょう。まず自分自身のたましいに、みことばを通して祝福するのです。
そうすれば私たちは、私たちの隣の人へ、そのまた隣の人へと、この世に神の祝福を広げる、担い手となってゆきます。
イエス・キリストが私たちのために死なれ、よみがえられた恵みを、まだ知らぬ人々に伝えていく、祝福の担い手となりましょう。
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