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2021.9.12主日礼拝説教「一ミナの福音」(ルカ19:11-27)

 こんにちは、豊栄キリスト教会牧師の近 伸之です。
 今回の説教題「一ミナの福音」は、我が新潟県が生んだ偉大なる漫画家、高橋留美子氏の「一ポンドの福音」からとっています。原作を読んだことがないので(おい)、タイトルだけいただきました。噂で聞いたところによると、ボクサーを目指す青年が、ある修道女(シスター)に出会い、夢を果たしていく内容らしいのですが、ボクシング漫画なのか、それとも恋愛漫画なのかはよくわかりません。一ポンドはボクサーの体重を表す重さの単位なので、貨幣価値を表す一ミナとは明らかに違いますしね。いただいたのはタイトルだけで、内容にはまったく関わりはありません。それはさておき同じ高橋留美子氏の「めぞん一刻」は、昭和から平成にかけて一世を風靡したラブコメの名作ですので、読まれたことのない平成後期生まれの方々は、どうかご一読ください。私は高校時代にあれを読んで、浪人生という生き方も悪くないなと思いました。危ない、危ない。序盤を読んでいただければ意味がわかります。
 ところでボクシング漫画と言えば、昭和40年代が漫画適齢期であった方は「あしたのジョー」(ちばてつや)、平成生まれの方は「はじめの一歩」(森川ジョージ)と答えるそうですが、私たち昭和50年代が漫画適齢期であった人間は「がんばれ元気」(小山ゆう)を連想します。うろ覚えなのですが、私が小学生の頃、新潟市長選に立候補していた故・若杉元喜氏(当時の現職?)の選挙ポスターに、なぜか本人の写真ではなく「がんばれ元気」(ゲンキつながりで)の主人公のイラストがそのまま使われていた記憶があるのですが、インターネットで「若杉元喜」「がんばれ元気」「小山ゆう」と複合検索しても、そのような画像はまったくヒットしませんでした。当時は著作権の問題は今ほど厳しくなかったとしても、いったい公職選挙法で、選挙ポスターに漫画のキャラクターを用いるというのが許されていたのかは不明です。小さいときの記憶なのでうろ覚えで申し訳ないのですが、ご存じの方がいたら、豊栄キリスト教会「私も見たことあるよ」の係まで。相変わらず、どうでもよい話で申し訳ありません。週報はこちらです。






1.
 先週は「神に不可能はない」というタイトルで、ザアカイの救いを語りました。イエスは、ザアカイのように神から離れてしまっている人々を探して救うために来られました。しかしエリコの町の人々は、だれもザアカイの救いを喜ばなかったのです。「イエスは罪人のところに入って、客となった」と批判しました。しかし私たちは、エリコの人々を責めることはできません。神の国とは、人間の常識を越えた世界だからです。人間は、神の国は正しい人が入ると考えます。しかしイエスは、罪人ザアカイをはじめから選んでおられました。彼が悔い改めたから選ばれたのではなく、彼がイエスに出会う前から、彼を選んでおられました。神の国が人間の常識を越えた世界だというのは、非常識な人間の集まりという意味ではありません。神の国にどうやったら入れるのか、神の国がいつ来るのか、神の国はどのようにして現れるのか、それらはすべて人間が考えられる常識を常に越えている、ということです。
 人々は、イエスがエルサレムに入られれば、神の国がすぐに現れる、とも考えていました。だからイエスがエルサレムに近づくにつれ、国の行く先を憂うユダヤ人たちがこぞって集まり、群衆はますます熱狂しました。しかし神の国は、人々が願うようには来ないことをイエスはこのたとえ話を通して教えておられます。神の国は、ある国の身分の高い者が王位を授けられるために遠い国に旅立ち、そこから戻ってきたときに現れるようなものである、そして彼は自分の国民から「この人が王になるのを私たちは望まない」という拒絶さえ味わう。おわかりでしょう、これはイエスの十字架、復活、天に昇って栄光を受け、そしてやがて地上に戻ってこられることを表しています。そしてイエスは、ご自分のしもべたちにひとりずつ同じ一ミナを与え、自分が帰ってくるまで商売をするようにと命じられました。それは何を意味しているのでしょうか。

2.
 ところでその答えの前に、今日のたとえ話とそっくりなものが、ルカではなくマタイの福音書にもあることに触れておかなければなりません。マタイではある者には一タラント、別の者には二タラント、さらにある者には五タラントという大金を預けて、自分が留守のあいだこれを増やしておくように、と命じています。一タラントは現代に直すと約三千万円、五タラントともなれば一億五千万円です。神はそれほどまでに大きな賜物を、一人ずつに与えてくださった。そして与えられた賜物はそれぞれ違います。三千万円とか一億五千万円というのは本質ではなく、値段がつけられないほどの個性的な賜物を、それぞれがひとりずつ与えられている。まさに最近のはやりである多様性を、神である主人を喜ばせるという一つの目的のためにそれぞれが生かしていく、それが一致であるということがマタイのたとえ話には込められています。
 しかしこのルカ福音書に出てくる一ミナは、現代の金額に直すと約50万、商売の元手としては、いささか心許ない金額です。そしてさらに、この主人は十人のしもべたちそれぞれに同じ一ミナを預けています。ここには、イエス様がそれぞれ違った賜物をひとり一人に託したというマタイのメッセージとは異なる、ルカ独自のメッセージが込められています。では、この一ミナとは何を指しているのでしょうか。
 それは福音です。この世の人々にとってみれば、福音とはクリスチャンや教会の中だけで通用する、宗教用語の一つでしかありません。そして福音は、時代や環境によって内容が異なるということはありません。しかし、どんなに小さなものとみなされていても、この福音を心に受け止めて、その福音に従って生きようと願うならば、人生が変わるのです。
 私たちは、その福音をゆだねられた者たちです。福音は一つしかありません。神が人となられ、私たちの罪のために十字架にかかり、救いを与えてくださった、ということです。しかしこの一つの福音を一ミナとしてゆだねられた神のしもべひとり一人が、自分にゆだねられた賜物、タラントを通して、この福音をそれぞれの方法で世に伝えていくならば、それは五倍、十倍、あるいはそれ以上の実を結んでいくのです。

3.
 しかし主人であり王であるイエスが喜ばれるのは、十ミナとか五ミナという結果ではありません。預けられた一ミナ、すなわち福音を、主を喜ばせるために何とかして活用していこうとする内なる思いを喜ばれるのです。このたとえ話の中では、十人のしもべに一ミナずつ与えられました。しかしその十人の結果報告は、十人どころか三人だけで終わってしまいます。それは、この三人目のしもべがやったことが一番悪いことであって、それ以外については触れる必要がなかったからです。三人目のしもべがしたことは何だったでしょうか。預けられた一ミナを、布に包んで、しまっておいたことでした。彼は主人の財産で利益を出すこともしませんでしたが、損失も与えていません。主人が怒った理由は、利益や損失ではないのです。このしもべが、主人のことをわかっていなかったことに怒っているのです。このしもべは言いました。「あなた様は預けなかったものを取り立て、蒔かなかったものを刈り取られる厳しい方ですから、怖かった」と。
 一ミナは、福音のことをたとえていると言いました。福音は、私たち罪人がイエスによって神の子どもとされる恵みを生み出します。しかしこのしもべは、福音をゆだねられているものでありながら、自らが神を恐ろしい方と考え、損失を出すくらいであればはじめからしまいこんでおこうとしました。神が悲しまれるのは、その子どもたちが損失を出すことではなくて現状維持にとどまることです。主人を愛している者は、損失を出してでも主人のために何かをしたいと願います。しかし現状維持を選ぶ者にとって、主人への愛よりも、もし損失を出した場合のリスクが勝っています。言い換えると、その愛は、損失を出して叱られるという恐れに負けています。聖書は失敗しないためのマニュアルではありません。クリスチャンは成功か失敗かで自分のしたことを評価する愚かさから解放されています。神さまは成功か、失敗かということを私たちの評価基準としては問われないお方であるからです。仮にこのしもべがその一ミナを使って商売に失敗したとしても、主人は彼にその責任は問いません。私たちも同じです。十字架で罪を背負われたイエスは、十字架を伝えたために私たちが負うことになるすべての責任も引き受ける覚悟で、私たち主のしもべにそれぞれ一ミナの福音を預けてくださったのです。

結.
 最後に出てくる、「私が王になるのを望まなかったあの敵どもは、ここに連れてきて、私の目の前で打ち殺せ」という言葉は、今までの話をぶち壊すほどに残酷に聞こえます。しかしイエスを拒み続ける人々に対して、最後に待ち受けているのが、私たちが想像もできないような恐ろしいさばきです。だからこそ、私たちは福音を伝えていきましょう。クリスチャンにとって、福音を伝えることは筋肉と同じです。使わなければ衰えます。主のために福音を伝えることを喜ぶ生活をしている人はますます神の心と福音がわかってきますが、人の評価を恐れて福音を伝えないことが当たり前になると、福音そのものがわからなくなります。それが持っていた一ミナさえも取り上げられるということです。私たちにゆだねられた一ミナの福音を人々に伝えていきましょう。

posted by 近 at 21:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 2021年のメッセージ
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