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2021.11.14主日礼拝説教「最初の奇跡」(ヨハネ2:1-11)

 こんにちは、豊栄キリスト教会牧師の近 伸之です。
 毎年この時期になりますと、世では七五三のシーズン。当教会では代わりに「子ども祝福式」を行っています。とはいえ、以前は大勢の教会員が祝福してくださるなかで、子どもたちのお祝いをしていたのですが、今は礼拝も分散形式を余儀なくされていますので、少し寂しい感じがします。今回、メッセージも同じ聖書箇所から、大人向けと子ども向けに2パターンを用意して、それぞれの礼拝で語りました。子ども向けの方は、説教原稿も一応作ってはいますが、ここでは割愛します。大人向けと子ども向け、それぞれのメッセージ録画へのリンクを張りましたので、暇な方興味のある方はご覧ください。
 来年は、みんなが集まることができたらいいですね。コロナ禍の中で、戦っておられる方々がいやされ、励まされるようにお祈りしております。週報はこちらです。

(第二礼拝)

(第三礼拝)



序.
 まず11節をご覧ください。「イエスはこれを最初のしるしとしてガリラヤのカナで行い、ご自分の栄光を現された。それで、弟子たちはイエスを信じた」。イエス様は、三年半の宣教生活の中で、数え切れないほどの奇跡を行われました。そしてこの「水をぶどう酒に変えた」奇跡こそ、その最初の奇跡であった、と書かれています。
 この「最初」という言葉が、私たちの日常感覚と、聖書の意味とは正反対のことを指すことに注意してください。私たちの日常感覚では、「最初」というのはまだ完成していない試作品、改善の余地がたくさんあるものです。しかし神は、不完全なものを作ることはありません。聖書に書かれてある神のみわざに関するもので、「最初」とあるものは、その後に続くすべてのエッセンスが詰まっているものなのです。例えば、イエスが最初に語られたたとえ話は、「種まきのたとえ」と言われるものでした。弟子たちがその意味について尋ねると、イエス様はこう答えています。「このたとえがわからないのですか。そんなことで、どうしてすべてのたとえが理解できるでしょうか」。
 つまり、この最初のたとえ話を正しく聞き、正しく理解するならば、この後のすべてのたとえ話をあなたがたは悟ることができる、と言われたのです。そしてこのカナで行われた、最初の奇跡も同様です。この奇跡の中に、この後イエスが行われるすべての奇跡に共通する本質が描かれています。今日はそれを、二つの点に分けて、お話をいたします。

1.
 まずひとつは、神の奇跡は、人の求めに応じて生まれるものではなく、神ご自身がはじめから時と場所を定めておられる、ということです。ユダヤの婚礼は、一週間続きます。ぶどう酒が最後まで切れないようにふんだんに準備しておくことは、新たな家長となる花婿の器が試される、極めて大事なことでした。「ぶどう酒がありません」という、イエスの母マリヤの言葉は、この緊急かつ大変な事態に対して、自分の息子でありながら神の子としての力を認めていた、マリヤの信仰が現れています。しかしそれに対して、イエス様はこう答えられました。「女の方、あなたはわたしと何の関係がありますか。わたしの時はまだ来ていません」。なんと冷たいんだ。誰もがそう思うでしょう。しかしここに神の奇跡の第一の鉄則が記されています。神は人の願うようなやり方や結果をはるかに越えたことを、はじめから用意されておられるのです。イエス様が、母親への愛情の念など捨てていたということではありません。あなたが心配する前から、私は栄光を表す時をすでに決めている、ということです。
 人は、神が動いてくれないとぼやきます。信仰者でさえ、神は動きが遅いと思うことがあります。しかし、神は私たちひとり一人を見ておられます。口から出る言葉だけではなく、言葉にならない、心の中の痛みや叫びも、すべて見つめておられます。そしてご自分が決めておられる時に、私たちが想像もつかないような方法で、助けをもたらす奇跡を成し遂げられるのです。
 では、祈る必要などあるのか、と考える人もいるでしょう。私たちが求める前から、神がすでに助けを用意しておられるのならば、なぜ祈らなければならないのか。しかし祈りは、苦しい時の願いだけではありません。神への賛美であり、神への感謝です。私たちがイエス様の十字架を通して、神にのろわれた者から神の子どもとされた恵みの結果です。そして祈りは、神が私たちのために用意しておられる圧倒的な助けをふさわしく受け取ることができるように、私たちを整えます。神がどんなに想像を超えた助けを用意しておられるとしても、私たちがそれを助けと気づかない心のままでいたならば、それは賛美も感謝も生み出さないからです。
 あなたを何かとてつもない苦難が襲ったとします。最初は、本能的に、神よりも自分で何とかしようとします。それができないと他人に頼ります。自分にも他人にもどうしようもないとわかって青ざめます。そこになってようやく神に心が向きます。もがきます。叫びます。祈りとは、まさにその叫びが生まれる場所でもあります。祈ることしかできない、そういう状況に追い込まれて、初めて自分の力を誇っていた姿や、人の助けに頼っていた姿を砕かれます。そのときようやく私たちは、神の助けを神の助けとして感謝して受け止めることのできる心になるのです。それがなければ、私たちの信仰は、信仰とはほど遠い、神をまるで過保護の母親のように扱い、自分の願いをいやな顔せずに聞いてくれる無料のカウンセラーのように扱う、幼子のような信仰のままです。しかし神は、あえて私たちを困難の中に置かれ、そこで私たちの心を砕き、整えてくださり、神の助けを受け取るにふさわしい者へと変えてくださいます。神の奇跡は、駄々っ子のような求めに応じて与えられるものではなく、神がご自分の主権をもって与え、計画しておられるものです。それを受け止めることができるために、私たちは日々神から取り扱われている者だということを信じましょう。

2.
 神の奇跡の第二の鉄則は、神は、奇跡を完成させるために、人を用いられる、ということです。これには補足が必要です。神は、最初に言ったように、人の求めではなく、ただご自分のお決めになった、時と方法をもって奇跡を始められます。しかしその奇跡を完成させるために、備えられた人々を用いてくださるのです。イエスの母マリヤは、一見、母の懇願を拒絶したように聞こえるイエス様の言葉に対して、信仰によって答えました。給仕をする人々のところに行き、「あの方が言われることは、何でもしてください」と話したのです。彼女は、神の子としてのイエスの権威の前に頭を垂れました。そしてもしマリヤのこの言葉がなかったならば、給仕の者たちも、水がぶどう酒になることを信じなかったでしょう。彼らは、水がめのところにやってきたイエス様の言葉に従い、水がめを水でいっぱいにしました。そしてイエス様は彼らに、これを汲んで、宴会の世話役のところに持って行くように命じました。いったいどのときに、水はぶどう酒に変わったのでしょうか。水瓶に汲んでいるときに、透明の水がワインレッドに変わったのでしょうか。それとも世話役のところへ運ぶ最中に変わったのでしょうか。聖書はそれについては沈黙しています。しかし私が堅く信じていることは、水を汲んでいるときには、これは水のままであっただろうということです。なぜなら、ぶどう酒になったものを世話役に運ぶだけであれば、信仰は必要ありません。しかし神の奇跡は、それを目撃するあらゆるものを信仰の世界に巻き込むのです。この奇跡は、まずイエスの母マリヤを行動へと導き、そして給仕の者たちをイエスの言葉に従う者へと導き、そして弟子たちを、イエスを信じる者へと変えたのです。

結.
 この奇跡は、最初の奇跡であり、すべての奇跡の原型と言えるものです。あらゆる奇跡は、この水をぶどう酒に変える奇跡から始まり、そしてぶどう酒が水に変わる奇跡へと繋がります。ぶどう酒が水に変わる、そのような奇跡が聖書にあったでしょうか。ぶどう酒は、イエスが十字架で流される血潮のたとえ、そして水とは、飲んでもまた乾く水ではなく、永遠のいのちの水のことです。十字架の上で、イエスは私たちすべての人間のために血を流し、いのちを捨てられました。それを信じるならば、誰であっても必ず救われます。救われるとは、永遠のいのちの水を受け取ることです。この世の水は飲んでも渇き、この世のぶどう酒は酔いから覚めれば頭痛で苦しみ、この世の婚宴はやがてお開きになります。そしてやがてすべてが崩れ去って何もなくなる、終わりの時がやってきます。しかしイエス・キリストを信じる者には、決して終わりがありません。信じたその瞬間から、永遠のいのちに向かって、キリストとの終わりなき婚宴が始まります。その祝福を、どうか一人でも多くの人に受け取っていただきたいのです。人が救われること、それは紛れもなく奇跡です。その奇跡を生み出すために、神は私たち先に救われた者を用いてくださいます。イエスの母のように、あるいはこの手伝いの者たちのように、その奇跡を完成するために用いられた者として、私たちもこの町に、それぞれの家庭に、救いの奇跡をもたらすために用いられたいと願います。

 神よ。あなただけが、救いの奇跡を起こしてくださいます。私たちには、自分で自分を救う力はなく、あなたに奇跡を求める資格もありません。しかし、どうか私たちを、あなたの奇跡の目撃者、証言者、協力者とさせてください。マリヤのように、水を汲んだ者たちのように、あなたの偉大なみわざに参加する者としてください。
posted by 近 at 18:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 2021年のメッセージ
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