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<会堂建設メモNo.1> 施主・設計者・施工者との関係性について

 当教会の新会堂建設について、設計施工を依頼する会社を内定した。その会社とは一切関係ないが、ここで、建設の基礎知識とも繋がるバッドニュースがあったので紹介したい。
赤れんが庁舎前の複合高層ビル、建設工事“やり直し”の異常事態…施工不良と虚偽報告発覚、大成建設の取締役ら辞任へ

 札幌市の中心部、北海道の赤れんが庁舎前に建設中の地上26階、地下2階の複合高層ビルで、施工不良と虚偽報告が発覚しました。地上15階まで組まれていた鉄骨などは全て撤去され、工事は、ほぼ“やり直し”となる前代未聞の事態です。施工不良と虚偽報告が発覚したのは、札幌市中央区北1条西5丁目に建設中の地上26階、地下2階の複合高層ビルです。この複合ビルは、アメリカのホテル運営大手、ハイアットが札幌市に初進出する他、オフィスや店舗などが入居し、来年2月に完成予定でした。

 しかし、事業主のNTT都市開発によりますと、1月末の現地視察の際、発注したものと違うボルトが使われていたことがわかりました。さらに、調査をすすめると、鉄骨の柱の水平度のズレ、コンクリートの厚さ不足などの施工不良も多数、発覚。こうした施工不良に関し、工事を担当した大手ゼネコンの大成建設が、計測値を正常なものと偽るなど、NTT側に虚偽の報告をしていたことも判明しました。このまま工事をすすめると、建築基準法に違反するおそれがあるとして、NTT都市開発は、すでに地上15階まで組まれていた鉄骨などを全て撤去し、工事を、ほぼ最初から“やり直す”ことを決めました。すでに工事の進捗率は、23%に達していましたが、完成は2026年6月末まで大幅に遅れる見通しです。

 虚偽報告も発覚した大成建設は、HBCの取材に「作業を担当していた社員で、品質管理の担当者が施工不良の指摘を受けた際、他の工事との調整で工期が遅れると懸念し、数ミリ程度なら問題ないと考えた」と説明したということです。また、大成建設が関わる他のビル建設で、同様の施工不良はないとしています。大成建設は、今回の事態の責任を取り、建築部門の責任者である寺本剛啓取締役の辞任などを発表しました。(配信 北海道テレビ)
 Yahoo!ニュースのコメント欄を見ると、「NTT都市開発にボルトの虚偽申告を見抜く力があったから発覚しただけ。施主にその力が無ければ大成はそのまま竣工させるつもりだった」といった、施主(発注者)であるNTT都市開発(以下NTT)のチェック能力を賞賛するものが目立つ。しかしNTTはデベロッパーであり、建設知識の専門家集団ではない。しかも夢のマイホームが建つことを心待ちにして毎日現場に見に行くお父さんならわかるが、ごくたまにしか見に行かない担当者が、発注したものと違うボルトが使われているなどということに気づくだろうか。いや、気づくまい。そもそも、施主であるNTTの担当者には図面を読み解く能力などあるまい。

 礼拝の配信に関係ない、久しぶりの記事投稿なので、辛口な意見になってしまったが、これはニュース記事での表現が、誤解を生みやすいものになっているのである。「事業主のNTTによりますと」「NTT側に虚偽の報告をしていたことも判明しました」「NTT都市開発は、工事のやり直しを決めました」。実際の建設において、施工者(この場合は大成建設)は、施主に報告などしない。報告するのは監理者に対してである。そしてこれだけの大きな複合ビル建設で、設計と施工の両方を同じ企業が引き受けることなどあり得ない。ニュース記事の言い回しは、まるでNTTが大成建設のごまかしを見抜いたかのように誤解しやすいのだが、実際の所、虚偽を見抜いたのは監理者(建築事務所)ではないだろうか。

 普通の人がマイホームを作りたいと思うとき、ネットで資料を集めたり、住宅展示場に行ってみたりする。あるいは建築資金を借りに両親に頭を下げに行ったりすると、知り合いの工務店を紹介されたりする。しかしハウスメーカーにせよ、地元の工務店にせよ、設計士と、施工者(いわゆる大工さん)は同じ会社(あるいは下請け、孫請け)である。だから設計図の通りに建物が建てられているかのチェックが働かない。設計の段階で初めからぼったくられている場合もあるし、現場で手抜き工事がされている場合もある。一般のマイホームであれば、高くても数千万円だろうが、これが例えば何十億円の複合ビルや公庁舎といったものになってしまうと、チェックが働かないと大変なことになる。だから施主(発注者)−設計士(建築事務所)−施工業者という、三角形のチェック&バランスの中で、不正が行われないようにすることが大事なのだ。

 そしてたとえ施主がお役所の人間であっても、施工者がボルトを勝手に仕様変更したり、水増し発注したりということは見抜けるようなものではない。だから設計事務所、あるいはそこから委託された監理事務所が、設計図書と施工状態が合致しているかを確認しながら、緊張感をもって工事を行っていく。これを「サラカン(監理)」という。なお「管理」のほうは「タケカン」とも言う。このブログを読んでいる方は、だいたいが収入の多くを教会にささげているような熱心なクリスチャンであろうからマイホーム建設には縁がないだろうが、うかつにも住宅展示場に迷い込んでしまい、あたかもモデルハウスと同じレベルの家が建てられると勘違いし、営業マンから「今なら頭金なしで行けますよ」とか誘惑されたとき、平穏な日常生活に戻ることができる呪文として「御社では外部の方からサラカンをしていただけますか」(略してバルス)と言えば、営業マンはムムこいつはできる、と少し身構えるというそうであるが、定かではない。

 話を戻すと、デベロッパーに過ぎないNTTがボルトなど見分けるわけがないというやや意地悪な思いで、他の記事を調べてみた。すると私も最近よく読むようになった日経クロステックに以下のような記事が掲載されていた。
札幌で施工中の超高層ビルで大成建設が精度不良を隠蔽、再構築で竣工が2年超遅延

 大成建設は2023年3月16日、札幌市中央区で同社が施工している高さ約116mの超高層ビル「(仮称)札幌北1西5計画」の現場で、鉄骨建て方とスラブ厚の精度不良があったと発表した。鉄骨精度の計測値を偽って工事監理者に報告していたことも明らかにした。地上部などを撤去して再構築するため、竣工は2年超遅れる見通し。同社の経営への悪影響は計り知れない。

 「(仮称)札幌北1西5計画」は、賃貸オフィスとホテルなどから成る地下2階・地上26階建て、延べ面積約6万m2の複合ビル。北棟の地上3〜16階にはオフィスが、17〜26階にはホテルが入居する予定だ。構造種別は鉄骨造と鉄骨鉄筋コンクリート造で、制振構造を採用している。

 敷地はJR札幌駅から徒歩10分の場所にある旧北海道放送本社跡地で、NTT都市開発(東京・千代田)が開発を進めている。設計・監理者は久米設計。21年10月に着工し、24年2月の竣工を予定していた。施工不良などの発覚に伴い、15階まで立ち上がった地上部分全体と地下の一部を撤去したうえで再構築するため、竣工時期は26年6月末ごろになる見込みだ。
 設計・監理者として名が挙げられている久米設計は、創業90年を数える、日本でも有数の建築事務所の一つである。おそらく隠蔽を見つけたのはNTTではなく久米設計であり、設計監理者としての本分を果たしたのであろう。大成建設のほうは、取締役が辞任するほどの大きな騒ぎになってしまったが、久米設計のほうはホームページでも特段報告はしていない。監理者として当たり前のことという矜持だろうか。

 教会建設は、開拓教会や中古住宅のリフォームといったものでない限り、一般の住宅建設よりも大規模な建物になる。それゆえに、設計者と施工者は別にするべきである、ということが言われる。しかし私たちは今回、設計と施工を一体として、ある会社に特命依頼をした。それは、結局の所、大切なのは信頼関係だからである。たとえ設計監理者と施工者が別であっても、設計士と施工者がなあなあの関係であれば、意味はない。建前は、設計は設計事務所に、そして施工は設計士が競争入札によって業者を選定することで適切なコストになるとうたっているが、実際には設計士も施工業者も、初めての相手とは一緒にやりたくないので、そこには少なからず作為が働くこともある。だから結局はサラカンが内部であろうと外部であろうと、大切なのは、施主が彼らを心の底から信頼できるかということなのだ。その点で、私たちはこれ以上の信頼を置ける所はないというクリスチャン企業に設計施工を依頼した。早速、打ち合わせのために日曜日、しかも主日礼拝から出席してくださるという。今はまだ明らかにはできないが、これからはこのブログで献金依頼をさせていただくこともあるかもしれない。よろしく!
posted by 近 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 会堂建設
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