聖書箇所 ルツ2章17〜23節
17こうして、ルツは夕方まで畑で落ち穂を拾い集めた。集めたものを打つと、大麦一エパほどであった。18彼女はそれを背負って町に行き、集めたものを姑に見せた。また、先に十分に食べたうえで残しておいたものを取り出して、姑に渡した。19姑は彼女に言った。「今日、どこで落ち穂を拾い集めたのですか。どこで働いたのですか。あなたに目を留めてくださった方に祝福がありますように。」彼女は姑に、だれのところで働いてきたかを告げた。「今日、私はボアズという名の人のところで働きました。」20ナオミは嫁に言った。「生きている者にも、死んだ者にも、御恵みを惜しまない【主】が、その方を祝福されますように。」ナオミは、また言った。「その方は私たちの近親の者で、しかも、買い戻しの権利のある親類の一人です。」21モアブの女ルツは言った。「その方はまた、『私のところの刈り入れが全部終わるまで、うちの若い者たちのそばについていなさい』と言われました。」22ナオミは嫁のルツに言った。「娘よ、それは良かった。あの方のところの若い女たちと一緒に畑に出られるのですから。ほかの畑でいじめられなくてすみます。」23それで、ルツはボアズのところの若い女たちから離れないで、大麦の刈り入れと小麦の刈り入れが終わるまで落ち穂を拾い集めた。こうして、彼女は姑と暮らした。2017 新日本聖書刊行会
6月に入りました。6月は「ジューンブライド」という言葉があるように、結婚式が多く行われる時期ですが、ある少年が、テレビで「ジューンブライド」という言葉を聞いて、父親に「ねえ、お父さん、どうしてみんな6月に結婚式を挙げたがるんだろうね」と聞いたそうです。すると父親は、何をわかりきったことをという顔で、こう答えました。「そりゃおまえ、田植えが一通り終わってようやく一息つけるからにきまってんねっか」。少年は、なるほど、さすがお父さんだと思ったそうですが、そもそもジューンブライドという習慣は外国から入って来たもので、日本にはありません。ではなぜ外国では6月に結婚式が行われてきたかというと、決まった説はないそうです。
私が小学生の頃、「ウエディングベル」という歌が流行りました。歌の内容は、教会での結婚式の招待客である、一人の女性の心を歌ったものでした。新郎は彼女の元恋人であり、祝福するどころか、心の中は新郎新婦への妬みと怒りで一杯、最後に彼女は心の中でこう叫びます。「くたばっちまえ、アーメン」。今思うと、あのアーメンが、私が生まれて初めて聞いた、アーメンと言う言葉であったように思います。
喜んでいる者とともに喜び、泣いている者とともに泣く、簡単なようで、じつはそれがたいへんに難しいことだと大人になるとわかるようになります。しかし決してあきらめたり、失望することはありません。私たちの心を知っておられる神は、私たちの心の狭さを責めるのではなく、むしろ私たちの心を変えてくださるお方だからです。19節をご覧ください。1エパ、つまり二人が一ヶ月のあいだ優に暮らしていけるほどの大麦を持ち帰ってきたルツに驚いたナオミは、こう問いかけます。「今日、どこで落ち穂を拾い集めたのですか。どこで働いたのですか。あなたに目を留めてくださった方に祝福がありますように」。
「祝福がありますように!」。じつはここには、ナオミの驚くべき変化が生まれていることに気づいてください。それを明らかにするために、しばし今までの物語を振り返ってみましょう。
ナオミはベツレヘムに失意の中で戻ってきました。私の名前をナオミ、喜びではなく、マラ、苦しみと呼んでください、と言うほどに、彼女は人生に絶望して帰って来ました。全能者が私をひどい苦しみに会わせたのです、という周囲への言葉は、彼女が神をどのように見ていたかを物語っていました。そしてルツが落ち穂拾いに出かけたいと言ったときにも、ナオミはただ一言、「娘よ。行っておいで」と、それだけでした。外国人、しかも忌むべきモアブ人であるルツが、いったいどれだけのことができるか、そんなあきらめが感じられるような言葉です。しかし今、彼女は目の前の大麦の束を見ながら、「祝福がありますように」という言葉が自然と口をついて出てきました。そしてルツからボアズという名を聞いたとき、ナオミの心には、その名前のいわれの通り、喜びがさらに押し寄せてきました。ナオミは、今度はその人だけではなく、その人を通して恵みを注いでくださった、神を賛美します。20節をご覧ください。「生きている者にも、死んだ者にも、御恵みを惜しまない【主】が、その方を祝福されますように。」
それまでのナオミは、生きているが、死んだ者のようでした。そして家族三人を死へと追いやった全能者への賛美など、とても心に湧いてくることはありませんでした。しかし今、彼女は「ボアズ」という名を聞いたとき、神がすべてを導いてくださっていることを悟ったのです。ナオミの心の中には、今までの十年の歩みが、走馬燈のように思い出されてきたことでしょう。
十年前、イスラエルを大飢饉が襲ったとき、ナオミと夫エリメレクは故郷ベツレヘムを後にして、モアブへ移りました。しかしイスラエルにおいて、命よりも大切なもの、それは土地です。先祖伝来、神から与えられた相続地です。ベツレヘムを捨ててモアブへ移るということは、神が与えてくださった相続地を見捨てるということでした。それでも生きのびるためには仕方がない。彼ら夫婦はそう信じて、モアブに移り、そこで二人の子供を設けました。律法で禁じられていた、モアブ人の娘と息子たちを結婚させることにまで手を染めました。すべては、生き残るため。そして子孫を残していくため。しかし神は、ナオミから夫を奪い、二人の息子を奪い、そしてベツレヘムにあった相続地も人の手に渡った。いったいどこに、神に感謝する余地があるのか。神はどれだけ私から奪い、私を苦しめれば気が済むのか。それが、昨日までのナオミの心でした。
しかし神は、奇跡としか言えない出会いを通して、土地を買い戻すことのできる資格をもった親戚、ボアズを、このルツを通して出会わせてくださった。ナオミは思わず「どうか祝福があるように」と言わずにはいられませんでした。長い間失われていた、感謝という名のともしびが、再び彼女の心にともりました。祝福あれ!それこそ、彼女の人生の中に長い間、忘れられていた言葉でした。しかし今、彼女は祝福を叫びます。そして私たちが人を祝福できるのは、神への感謝が心に満ちるときです。それは今この時だけを感謝するのではなく、今までの人生すべてに対する感謝でした。昨日までは神が私の家族を奪ってしまったと、過去の日々を憎んでいたナオミは、いま、「生きている者にも、死んだ者にも、御恵みを惜しまない主よ」と歌います。そして彼女のの人生は、この日をきっかけに、神の目をさけて生きる生活から、むしろ神が何をしてくださるかを期待していく生活へと変えられていくのです。
私たちは、人生の一つ一つをかみしめてみると、必ずそこには神に感謝すべき、恵みの数々があることに気づきます。感謝を取り戻すとき、私たちはだれかに寄り添い、その人を祝福することができます。私たちが誰かに与える祝福は、この世で人々が欲するような金銭や安全を保証するものではありません。しかし貧困と危険の中でさえ、人は神に感謝することができるのだということを証明します。それを教会では「御国の前味」という言葉で表現し、聖餐式は、ただの伝統行事ではなく、その御国の前味を体験することなのです。毎回、聖餐式で歌っている、新聖歌46番、文語体なので、歌詞を深く点検することがなかったかもしれません。最後の4節ではこう歌っています。「面影うつししのぶ 今日だにかくもあるを 御国にて祝う日の その幸やいかにあらん」。口語体に直せば、「地上の教会で、これほどの恵みにあずかるとすれば、実際に天の御国では、いったいどれだけの恵みが待ち受けているのだろうか」ということです。その讃美歌作者の、むせび泣くような告白に対して、アーメンと共に告白したいものです。その恵みはやがて天で主にまみえたとき完全に現れますが、この地上の信仰生活の中で、私たちは断片的にその恵みを頂いている、それが御国の前味です。
イエス・キリストを信じるとき、この地上においては患難があり、迫害があります。しかし患難や迫害は私たちを滅ぼすものではありません。どんな患難や迫害の中にあっても、私たちは感謝と喜びを持ち、誰かを祝福することができる、それを証しさせるためのものです。ナオミの上に起きたこと、それは、チクチクした、桃の実の下には、とびっきりの甘い果汁がしたたっていることにたとえることができます。主イエス・キリストを私たちに与え、感謝と祝福へと私たちを変えてくださった、父なる神をほめたたえながら歩んでいきましょう。
シュガーの代表曲「ウエディング・ベル」。
バンド名の由来はメンバー全員が佐藤さんだからではなく「しおらしくない」という意味だそう。
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(04/20)重要なお知らせ
(09/24)2023.9.24主日礼拝のライブ中継
(09/23)2023.9.17「家族を顧みない信仰者」(創世19:1-8,30-38)
(09/15)2023.9.10「安息日は喜びの日」(マルコ2:23-3:6)
(09/08)2023.9.3「私たちはキリストの花嫁」(マルコ2:18-22)
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